ブログ「工房だより」

●漆刷毛

2021年08月14日


この度、漆刷毛の毛先出しを行いましたので、その手順をまとめてみました。合わせて竿作りに使う刷毛についても解説しました。

●毛先出し
下の写真は私が胴塗りに使用している刷毛です。幅六分で女性の毛髪で作られてます。江戸時代から続く泉清吉作の刷毛ですが、作られた方に申し訳ないほど毛先が荒れてます。胴塗りでは塗りムラが出ないよう何度も何度も刷毛を竹にこすり付けるように塗りますが、そのためどうしても毛先が荒れてしまいます。平らな面の塗りなら毛先はそれほど痛まないと思いますが、竹はそうではなく円形で、また節や芽の出っ張りなどもあり、どうしても毛先をいじめてしまいます。とくに毛先の中央部分は竹に強く当たるため、すり減ってくぼんでしまいます。
今回、毛先を新しくする作業を行ったので、その手順を紹介します。
①写真のようにまず鋸で毛先を切り落とします。漆刷毛は鉛筆のように木枠の中に毛が通ってます。刷毛の長さは18センチ位ですが、その長さ全部に毛が通っているのを本通し、半分まで毛が通っているのを半通しといいます。
②次に毛先の長さ分、木枠を鋸で落とします。毛は漆で石のように固められてます。
③次に砥石を使って先端の毛を両刃の刃物のように、表裏両面から研ぎます。毛先の先端が角張っていると、またボリュームがあると塗りにくいからです。
④毛先の形が出来上がったら毛先を木台に乗せ金槌で叩きます。毛先は石のように固くなってますが、根気よく叩いていくと少しずつほぐれていきます。
⑤毛先がほぐれたら頭髪用のシャンプーで木べらを使って洗います。毛先を固めるのに使った漆などが出てきます。
これで毛先出しの作業は終わりですが、しばらくの間は汚れが出てくるので注意が必要です。

●竿作りに使う刷毛
胴塗りには、私は六分刷毛を使ってますが、もう一回り幅のある八分刷毛がいいと思います。胴塗りは竹に沿って大きく刷毛を動かす動作が入りますが、刷毛の幅がないと竹を外してしまいます。また前述のように、胴塗りは刷毛をいじめる塗りになるので、すげ口の刷毛とは分けた方がいいです。
すげ口の塗りには五分刷毛と三分刷毛があれば十分です。どちらか一つということなら、三分刷毛をお勧めします。中・小物竿なら三分刷毛はとても塗りやすいです。
ガイドの足塗りには5ミリ幅くらいの絵の具筆が使いやすいです。
目打ちには細めの面相筆を使います。
使用後は溶剤で数回、漆が溶け出なくなるまで洗います。使用する溶剤はテレピン油は高価なので、一般に使われるペイントうすめ液を使ってます。その後、菜種油で2回ほど洗います。ペイントうすめ液では溶け出なかった漆がすこし出てきます。洗い終わったら刷毛から余分な菜種油を拭き取り、刷毛に菜種油がすこし含んだ状態で毛先を整えしまいます。次に使うときは、ペイントうすめ液で菜種油を洗い出して使用します。

左から胴塗り用六分刷毛、すげ口用五分刷毛、同三分刷毛、ガイド足巻き塗り用絵筆、芽打ち用面相筆


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